研究概要 |
カイコの絹糸腺は、stage19の胚の下唇節の外胚葉性細胞の陥入によって形成される。この過程に関わる遺伝子群間の制御の階層性を解析するため、Bm Dfd,Bm Scr,POU‐M1,Bm fkhなどをクローン化し構造解析を行なった後、in situ hybridizationによってこれら遺伝子群の発現状況を観察した。一方、絹糸腺組織特異的に転写されるフィグロイン遺伝子およびセリシン-1遺伝子の転写制御因子について、精製とクローニングを行なった、EFIとOBF-1については精製法が確立し、POU-M1については既にクローン化済みである。 Bm Scrは絹糸腺が形成される前の時期に下唇節全体で発現され、ついで絹糸腺が陥入する際にはその部域から発現の消失がおこる。この消失を相補する形で、陥入部位特異的にPOU-M1が発現されてくる。終末分化特異的遺伝子の一つであるセリシン-1遺伝子の転写制御因子POU-M1が、絹糸腺発生の初期にこのような発現をすることは大変興味ある観察である。POU-M1は、絹糸腺形成につれて発現領域を拡大して行き、やがて中部絹糸腺に限局された発現となって落ちつく。また形成途上の絹糸腺の後極部分にはBm fkhの発現があり、Bm lnは始め前部および中部絹糸腺に発現した後、中部に限局されて行く。 今後は、これら遺伝子間の制御の実態を解析する予定である。
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