一酸化窒素(Nitric oxide)は血管内皮や神経系においては可溶性グアニレートシクラーゼを活性化することにより作用していると考えられている。可溶性グアニレートシクラーゼはαとβサブユニットのヘテロダイマーで構成されるとき活性を有することが知られている。現在のところ神経系ではαサブユニットにはα1とα2が(α3は人α1であると考えられる)、βサブユニットにはβ1のみが(β2は腎臓タイプ)主に存在すると予想される。私たちはこれまでにラットの脳におけるα1とβ1サブユニットの発現を調べ線条体などでは両サブユニットが豊富に発現するがα1サブユニットがほとんど発現していないのにβ1サブユニットが優勢に発現している脳領域が多くあることを報告してきた。そこでα2サブユニットのラットホモログをPCRで取り同定しその発現を調べ、さらに同サブユニットのクローニングを試みた。ラットα2サブユニットの発現パターンはα1と大変異なりα1と相補的な発現傾向を示す部位が多く観察された。例えば嗅球ではα1の発現は糸球体層に強くその他の層では弱いのに対し、α2の発現はは糸球体層で弱く顆粒層で強い。また下位脳幹ではα1の発現は一部の青斑核などを除きを弱い傾向にあるが、一方α2の発現は下位脳幹の大部分の神経核に中等度の強さで発現していた。同様な傾向は海馬などでも観察された。以上の結果から、中枢神経において可溶性グアニレートシクラーゼがα1とβ1のヘテロダイマーとして存在する部位とα2とβ1のヘテロダイマーとして存在する部位があることが示唆された。両ヘテロダイマーの機能的違いについてさらに検討する必要がある。また、活性化された可溶性性グアニレートシクラーゼが産生するcyclicGMPのターゲットであるcyclicGMP‐dependent protein kinase(GK)とについても検討しGK1とGK2の発現が大変異なることを見いだした。以上の成果は現在追試実験のうえ総括し発表予定である。
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