研究概要 |
網膜視蓋投射系における特異的神経結合形成を担う分子機構を明らかにすることを最終的目標として研究を行っている。側頭側(T側)網膜神経節細胞と鼻側(N側)網膜神経筋細胞の神経突起は視蓋部尾側の膜成分に対して明らかに異なる感受性を示すことから、網膜のそれぞれ側頭側及び鼻側に位置する神経節細胞は同等ではなく、異なるサブセットの遺伝子を発現しているものと推定される。この網膜において領域特異的発現を示す遺伝子を単離・同定することによって網膜視蓋投射系のトポグラフィカルな結合特異性決定の分子機構を解明する錠が得られると考え、以下の研究を行った。ニワトリ8日目胚網膜からT側及びN側約1/3をそれぞれ分離し、これらよりmDNAを抽出、cDNAを調製した。次にこのT-cDNA及びN-cDNAを用いて、PCRとHybridization subtractionを繰り返し、T側及びN側に特異的なcDNA分子の濃縮を行った。現在、T側及びN側に特異的発現を示すクローンをそれぞれ複数単離することに成功し、その構造解析を進めている。その内のTF-1,NF-1と名付けたクローンはそれぞれT側、N側において特異的に発現しているが、両者共にfork head familyに属する転写調節因子であることが判明した。従って同じ転写調節因子familyに属する異なる因子が、網膜においてT側、N側と異なる領域において発現することによって、その領域特異性を決定づけていると考えられる。今後、これらのcDNAを用いてRetro virus vectorによる異所的強制発現を行うことによって、網膜視蓋投射系の突起伸長路が影響を受けるかという実験を計画している。
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