研究概要 |
本年度も引き続き,種々の培養細胞におけるCa^<2+>/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMキナーゼII)の活性化反応とその生理的役割の検討に焦点をしぼった。 1)生体組織の培養細胞における研究 a)ラット大脳皮質アストロサイトに関する研究 生後1日目のラット大脳皮質から,既報の方法に基づき,アストロサイトを培養した。最終の細胞標本は95%以上の純度を示した。グルタミン酸受容体を刺激すると,CaMキナーゼII自己燐酸化反応,Ca^<2+>依存性活性が上昇し,酵素の活性化反応が確認された。活性化反応にともなって,内因性基質であるグリア線維性酸性蛋白質,ビメンチンの燐酸化反応が惹起された。非NMDAおよび代謝性グルタミン酸受容体が関与していることがわかった。 b)ウシ副腎髄質細胞に関する研究 ウシ副腎からクロマフィン親和性細胞を培養した。アセチルコリン刺激にともなってCaMキナーゼII活性化反応とチロシン水酸化酵素燐酸化反応を検出した。 2)海馬長期増強(LTP)に伴うCaMキナーゼII活性化反応 ラット脳海馬切片を用いてLTP誘発に伴うCaMキナーゼIIの活性化反応を調べた。CA1錐体細胞への興奮性入力線維(シャファー側枝,交連線維)を短時間,高頻度刺激するとLTPが発現する。刺激に伴って,Ca^<2+>非依存性活性は有意に上昇し,少なくとも1時間以上持続した。自己燐酸化反応の亢進が確認された。全活性にも有意な上昇が見られた。NMDAグルタミン酸受容体の阻害剤であるAP5をあらかじめ投与しておくと,LTP誘発およびCaMキナーゼII活性化反応が認められなかった。以上の結果は,CA1のLTPにおいて,NMDA受容体活性化に続いて,CaMキナーゼII活性化反応の惹起されることが明らかになり,LTP誘導における酵素の役割が示唆された。
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