研究概要 |
ステロイドホルモンの神経細胞、神経堤由来細胞に対するin vivoでの作用を見るために、まずエストロゲンを卵巣摘出ラットに投与した。その結果、視床下部視索前野の部位において顕著なエンケファリン、CGRP,ドーパミン産生ニューロンの突起の伸長が認められた。視床下部視索前野の部位のニューロンを培養し、培養液内にエストロゲンを投与すると、著しいニューロンの突起の伸展が観察された。これらのことから、in vivo,in vitroのいずれにおいてもエストロゲンの突起伸長に対する作用が確認された。また、副腎髄質細胞を培養し、グルココルチコイドと神経栄養因子(NGF)を培養液内に投与した。NGF投与群は著しい突起の伸展を示したが、グルココルチコイド存在下ではクロマフィン細胞の突起の伸長は抑さえられた。このように、同じステロイドホルモンと言っても作用が全く逆に働くメカニズムが存在していることが証明された。次に、エストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲン、グルココルチコイドのステロイド受容体、MAP-2,tauの細胞骨格関連蛋白、カテコラミン合成酵素であるチロシン水酸化酵素の、それぞれのmRNAの翻訳開始コドン領域にわたるアンチセンスDNA配列を設計し、DNA合成装置を用いて20-25merのオリゴマーを作成した。アンチセンスDNAオリゴマーの塩基配列の設計にあたっては、コンピューターによるホモロジー検索によってその特異性の確認をした。また、神経培養系において培養液中にアンチセンスDNAオリゴマーを投与した。まず、tauとMAP-2に対するアンチセンスDNAをNGF作用下の副腎髄質chromaffin cellに投与すると突起の伸長は起こらず、しかもtauとMAP-2の免疫反応は消失していた。このことは、アンチセンスDNAによってtauとMAP-2のタンパクの発現が抑さえられたと同時に、細胞形態の変化をも引き起こすことを示している。
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