研究概要 |
恐怖・不安を誘発する情動ストレス刺激は、ラットのバゾプレシン(VP)分泌を抑圧しオキシトシン(OT)分泌を増強する。この実験系を用い、情動ストレス反応における脳幹の上行性モノアミン系の生理的役割について以下の成績を得た。 1.ノルアドレナリン(NA)線維を選択的に死滅させる神経毒5-ADMPを用いて上行性NA系は、(1)無条件恐怖刺激及び条件恐怖刺激に対する神経内分泌反応を発現させる、しかし(2)不安刺激(新奇環境刺激)あるいは(3)侵害刺激そのものに対する神経内分泌反応には関与していないことを見出した(Brain Research印刷中)。 2.5-ADMP法、α1受容体阻害法および吸引組織除去法を用いて、(1)上行性NA系は侵害刺激に対するOT分泌反応を伝達するがVP分泌反応には関与しない、(2)延髄A2細胞群のNA系はCCK投与による嫌悪刺激に対するOT反応を選択的に伝達し、(3)A1細胞群は侵害刺激に対するOT反応を選択的に伝達する、ことを発見した(Neuroscience Research印刷中)。 3.上行性NA系の活動を修飾することによって抗不安作用を発現するとされているベンゾアゼピンの一種クロルジアゼポキサイド(CDP)は、無条件恐怖刺激および連合学習による条件恐怖刺激に対するVP反応とOT反応を阻害するが不安刺激(新奇刺激)に対する反応を阻害しないことを発見した(Neuroscience Research 24 : 151-158, 1996)。 4.CDPは、侵害刺激に対するVPとOTの分泌増強反応を阻害するが浸透圧刺激に対する反応を阻害しないことを発見した(Neuroscience Letters 203 : 49-52, 1996)。 5.5-HT_<1A>受容体アンタゴニストが不安刺激及び条件恐怖刺激に対するVP反応を阻害することを発見した(1996. 4. 4日本生理学会において発表)。
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