識別・指向運動は視野内に複数の物体が現れたとき、それらに眼球と頭を向け(指向運動)注視し、それぞれが何であるかを判断し(視覚識別)、そのうち注目する一つを選択し、それに再指向する運動である。本研究では識別指向運動を行うように訓練した無拘束ネコの指向運動中の上丘と橋・延髄網様体細胞の活動様式を定量的に調べた。 上丘は浅層、中間層、深層に大別される。上丘の細胞の活動は今まで拘束動物で報告された以外に新たに、浅層では特定の視野部位を注視すると持続的に発火(gaze neurone)する細胞群、深層では注視光やターゲット光を注視した時持続的に発火する運動の種類また注意に関係して活動する細胞群が存在することが新たに分かった。 一方橋・延髄網様体では指向運動に関係して活動する細胞は活動パターンから大きく3つのタイプに分類できた。すなわち運動に先行して、頭の回転角度に強く相関して短くバースト発火するphasic unit、ターゲット光が点灯すると、約40msの潜時で一時的に発火し、短いpauseの後再度発火し運動終了と共に活動を停止し、スパイク発火数は運動時間と強く相関するphasic sustained(PS)unit、注視光またはターゲット光を注視した時に特異的に持続発火するtonic unitである。Tonic unitは網様体の最も内側部とnucleus raphe、nucleus raphe magnusに多く存在した。一方PS unitはtonic unitよりやや外側の網様体内に、phasic unitはPS unitより外側の網様体内に多く存在し、種類により分布部位が異なる傾向があった。
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