ラットの脊髄から厚さ120μmのスライスを作製し、ノマルスキー顕微鏡下に脊髄後角ニューロンを同定して、パッチクランプ法を適用した。 1.ホールセル電位固定記録を行い、CNQXの存在下に単一介在ニューロンを細胞外刺激して抑制性シナプス電流IPSCを記録した。IPSCは、一部分、グリシン受容体ブロッカーのstrychnineにより抑制され、残りは、GABA受容体ブロッカーのbicu-cullineによりブロックされることから、グリシン性成分とGABA性成分の共存が明かになった。両成分を誘発ための最小刺激強度は、ほぼ同一であることから、グリシンとGABAは同一ニューロンに由来してco-transmitterとして働く可能性が示唆された。 2.次に、脊髄後角ニューロンからアウトサイドアウトパッチ記録を行い、GABAの投与を行った。低濃度(5-20μM)のGABAを潅流液投与すると、GABA受容体単一チャネル電流が記録された。コンダクタンスの主レベルは、およそ30pSで、サブステートが認められた。チャネル開口は、1バースト内での開閉の繰り返し(フリッカー)が特徴的で、この点はグリシンチャネルの性質と著しく異なった。また、高濃度(0.1-1mM)のGABAをピエゾ投与法によりアウトサイドアウトパッチに瞬時投与する方法を確立した。これにより、GABA誘発電流の不活性化(deactivation)、脱感作(desensitization)の時間経過の正確な解析が可能となり、単一チャネル電流とシナプス電流をつなぐ情報が得られるようになった。 3.GABA作動性IPSCを生直後と生後2週令で比較した。IPSCの下降時定数には有為な差が認められなかった。これは、グリシン作動性IPSCの下降相が生後2週で著しく短縮することと好対照をなす。
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