研究概要 |
生後0日-3週令のラット脊髄横断スライスに脊髄後角ニューロンを同定して単シナプス性GABA作動性抑制性シナプス電流(IPSC)のホールセル記録を行った。また、脊髄後角ニューロンからoutside-out patchを形成し、GABA誘発性単一チャンネル電流を記録した。GABA受容体チャンネルは、バースト内でのフリッカーが特徴的であった。各バーストを平均加算して得られる電流の時間経過はGABA作動性IPSCの時間経過とよく一致した。GABA作動性IPSCの平均振幅、振幅ヒストグラム、立ち上がり時間、下降相時定数を解析したところ、生後発達に伴ってこれらのパラメーターは有意に変化しなかった。次に、benzodiazepine,ZnのGABA作動性IPSCに対する効果を検討した。Benzodiazepineは、IPSCの下降相を顕著に遷延させたが、振幅には影響しなかった。Znは、一過性にIPSCの振幅を上昇させた後、抑制作用を引き起こした。これらの作用は生後日令に関わらず観察され、量的な差異は明らかでなかった。従って、以上のパラメーターに関する限り、脊髄のGABA作動性シナプス応答には明らかな生後変化が認められなかった。更に同様な実験を大脳皮質視覚野細胞について行ったところ脊髄同様、生後発達によるGABA作動性IPSCの時間経過の変化は認められなかった。また、最近、ラットの視床でGABA受容体のαサブユニットが生後2-3週で幼若型から成熟型にほぼ完全にスイッチすることが報告され、視床のGABA作動性IPSCの性質が生後発達に伴って変化する可能性が浮上した。そこで視床のニューロンからGABA作動性IPSCを記録して、生後発達による変化を検討したところ、顕著な時間経過の変化は認められなかった。これらの結果は、予想外であり、コリン作動性の終板電流やglycine作動性抑制性シナプス電流の下降相が、生後発達と共に顕著に短縮する事実と相反する事実である。
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