1.氷結晶の表面の存在が、オゾン分子の破壊に及ぼす影響を定量的に見積もるための実験を開始した。氷結晶表面にHClとClONO_2を供給すると、それぞれCl_2とHClOに交換される。この反応で生じるHNO_3は氷表面上に凝固し硝酸三水化物(HNO_3・3H_2O)となる。Cl_2とHClOは、紫外線に励起されて解離し、Cl原子を発生し、オゾン分子と反応し破壊される。従って、氷結晶表面上の硝酸三水化物の生成速度の測定により、オゾン分子の破壊速度を求めることができる。 2.上記測定を行なうために、真空チャンバーを製作した。このチャンバーの中心部に-90℃〜-100℃に冷却可能なステージを置き、この上に氷結晶試料をとりつけた。氷結晶表面に、HClとClONO_2を供給しながら、氷表面を偏光解析法により測定する。これにより、氷表面三水化物の厚みに関するデータを得ることができるようになり、反応速度の見積が可能となった。 3.HClやClONO_2の分子が氷結晶表面とどの様な相互作用をするのかを明らかにするため、これらの分子の氷表面上への吸着状況を調べるための予備実験を実施した。手法としては、表面でのレーザー光の反射に伴う第2高調波発生(SHG)を用いた。この方法により、氷表面での分子の配列や挙動に関する分子レベルでの情報を得ることが可能である。今年度は、氷結晶の表面からのSHGの検出実験を行ない、この様な系においても十分な感度でSHGを検出することができることを確かめた。次年度、2.で述べた装置に、SHG測定装置を組み込み実験を行なう予定である。 4.氷結晶表面上でのHClやClONO_2の分子の挙動を解明するための計算機シミュレーションを開始した。
|