1985〜1992年における陸奥湾観測データから、(1)NOAA-9〜12号の飛来時刻におけるAVHRR画像の雲量、(2)自動海況観測ブイシステムデータ、(3)湾周囲5カ所のアメダス観測データ、(4)青森気象台観測データ、(5)三沢高層気象観測データ、を入手してフォーマットを統一した統合データセットを作成した。同様に1991年に陸奥湾に設置した鉛直温度観測ブイの2年分の観測データも統合データセットに加えた。 三沢高層気象観測記録5600事例の中から、陸奥湾が快晴であることが保証できる180事例を抽出して陸奥湾快晴大気モデルを作成し、LOWTRAN-7を用いたシミュレーションにより、AVHRRデータに対する海表面温度推定式を求めた。その結果を実測水温との回帰分析による海表面温度推定式と比較したところ、係数項の値が前者ものが約20%程度大きな値を示した。現在この差異の原因を大気のエアロゾル濃度及び海表面効果の両面から究明している。鉛直温度観測ブイデータからは、海表面効果発生時の季節、時刻、日射、風速の条件を明らかにすることができた。 各方面の協力により短期間内に多くの観測データを入手でき、陸奥湾快晴標準大気モデルが得られたことは、今後の研究に大きな意義を持つものである。解析の結果、新たにエアロゾルの影響についての問題が提起されたが、特に大陸の西側に位置する日本周辺地域では、重要な課題である。鉛直温度観測ブイデータの解析からは、リモートセンシングで観測される海表面温度が、海洋学で言われてきたバルク水温とは必ずしも一致しないことを、観測の立場から明らかにしたものとして評価できる。
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