研究概要 |
研究初年度に当たる本年度では、炭酸イオンを層間陰イオンとする亜鉛・アルミニウム、亜鉛・ガリウム、亜鉛・クロミウム系について、主に試料の合成、X線回折、FTIRによるキャラクタリゼーション、熱分解特性(TG,DSC,TPD)について実験的検討を進めた。この中で新たに得られた知見を以下にまとめる。 1)亜鉛・アルミニウム系は、結晶性の良い試料が得られ、炭酸イオンの熱分解に伴う炭酸ガスの発生が、500℃以上の高温域で起こること、また水素雰囲気下では、炭酸ガスの発生は低く抑えられ、一部はメタンに転化するが、その多くは不揮発性の炭素化合物に転化することが明らかになった。 2)亜鉛・ガリウム系は本研究で初めて合成され、構造と熱特性が調べられ、結晶性の良いハイドロタルサイト類似構造をとる試料が得られ、比較的高温域で炭酸イオンが分解する特徴が、明きらかにされた。 3)亜鉛・クロミウム系は、構造の面では上記二系と比べ結晶性は低く、また熱分解挙動もはっきりとした段階的な変化を示さず、炭酸イオンの分解温度も比較的低温域にあることがわかった。さらに、空気中の熱分解において、Cr(III)イオンの一部がCr(VI)イオンに酸化されることが見いだされた。こうしたクロムイオンの価数変化は、環境保全という観点からも問題になると考え、さらに検討を進めた。その結果、金属種をマグネシウム、ニッケルに代えた場合にも同様にクロムイオンの酸化が起こり、その変化が現れる温度域が、炭酸イオンの分解の温度域と良く対応すること、一方、層間に吸着させる陰イオンを硝酸イオン、塩化物イオンに代えた場合にはクロムの価数変化は顕著には現れないことが明きらかとなり、クロムイオンの価数の変化は炭酸イオンの熱分解と密接に関連した現象であることがわかった。
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