亜鉛を含むハイドロタルサイト類似化合物(Zn/Al-Zn/Ga-、およびZn/Cr-HT1c)の構造と物理化学的特性、特に熱化学的特性について研究し、以下の知見を得た。 Zn/Al-HT1c炭酸塩の粉末X線回折パターンについてRietveld解析を行った結果、その構造は天然ハイドロタルサイト(Mg/Al-HT)に極めて近く、単に結晶系や格子定数のみならず、水酸基や水分子の位置など単位細胞内部の原子位置面でも非常に近いことが分かった。一方、FT-IRの面からは多少Mg/Al-HTと異なり、M-OH結合が多少強く、反面O-H結合が弱くなることが明らかとなり、Zn-O間の結合にわずかな共有結合性の寄与が示唆された。 Zn/Al-HTlcの熱分解特性は、Mg/Al-HTと明らかに異なることが分かった。この系では層状水酸化中の水酸基の約半分が200℃以下の低温域で分解し、比較的低温で元の層構造が破壊される一方、炭酸イオンの分解は逆に500℃以上の講演で起こる。またカチオンの中のAlの分率xが1/3に近いものでは580℃と780℃に二つのピークを持つCO_2の発生が見られた。こうした特異性はZn-O間における共有結合性と2:1型の規則的カチオン配列という二つの傾向の存在と関わるものと推測された。 Zn/Ga-HTlcは、通常の共沈法により調整可能であり、結晶性の良い粉末試料が得られること分かった。その構造と熱分解特性はZn/Al-HT1cのそれと類似し、低温での水酸基の分解、高温域での炭酸イオンの分解という特徴を示した。 Zn/Al-HTlcはこれら二種の化合物とは異なり、結晶性が低く、また炭酸イオンの熱分解は500℃以下で起こることが分かった。また、この炭酸イオンの分解時にクロムイオンが酸化され、クロム酸イオンが生成することが分かった。また、この炭酸イオンの分解時にクロムイオンが酸化され、クロム酸イオンが生成することが分かった。この現象は酸化性雰囲気の下で、元の構造中に炭酸イオンを含む場合に強く現れることが明らかとなり、炭酸イオンが熱分解する過程で生じる中間体の触媒的作用が示唆された。
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