本研究では、集積回路作製技術に由来するマイクロマシン技術を用い、トランスジェニック生物を作出する方法として、発生胚に効率良く遺伝子を導入するシステムの作製を行った。本研究では、微細加工技術で作られた薄膜微小電極上に、微小孔を形成させた薄膜を接着させた微量セルを作製し、微量のDNA溶液で遺伝子導入ができるようにした。このシステムが実現すれば、従来より、より少ないDNAで、より多くの卵の処理が可能となる。まず、電気パズルの印加により、物質が卵の膜を通過して内部に導入されるかを、色素EOSINを用いて検討した。その結果、電界強度が約100V/cm以上で細胞膜の透過性が促進できることが明らかになったが、従来確認されている動植物の値と大きく異なり、これは、卵細胞の受精膜が強固であるためと考えられる。また、薄膜微小電極による導入では、細胞を破壊せずにより強電界で注入できることが明らかになった。DNAの導入では、導入から日数がたつと発光が確認されず、卵細胞中で分解されたとこも考えられた。さらに、本研究では、発生の段階を変えてelectroporationをして発現を調べたが、少なくとも初期桑実期までの卵細胞では、本研究の方法での遺伝子導入は可能であることが確認された。そいて、本研究における遺伝子導入率は、41%とかなり高い値になった。これは、本方法が、DNA導入に有効な方法であることを示すと考えられた。 以上のように、本研究ではマイクロマシン技術を用いて使、メダカの卵にルシフェラーゼ遺伝子を導入し、発生段階と遺伝子導入の関係を調べたものであり、遺伝子導入の研究に有効な手段と知見を提供したと考えられる。
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