大気中の臭化メチルは、成層圏オゾンを破壊するガス状臭化物中で最も重要な化合物である。これまでのところ、海洋起源の臭化メチルの放出量は約10万ton/年と推定されているが、その推定値には大きな隔たりがあり、またその放出メカニズムは全く不明であった。本研究所では、多数の海藻・海洋プランクトンについて、モノハロメタン放出の有無に検索し、数種の海藻・海洋プランクトン直接的に臭化メチル、ヨウ化メチルが放出されることを確認した。さらに、これらの放出速度を定量し、例えばプランクトンの一種であるPavlova gyransからは約12〜13ng/g wet algae/hrのモノハロメタンが放出されることを明らかにした。その結果、海洋植物プランクトンの0.13%程度が臭化メチルを放出すれば、上記の約10万ton/年の放出量に相当することを算定した。さらに、モノハロメタンの生成機構を酵素レベルで研究し、こうした化合物が、藻類に含まれるS-アデノシルメチオニンハライドイオンメチル転移酵素反応により合成されることを証明し、これまで不明であった臭化メチル類の生成機構を分子レベルで明らかにした。
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