本年度も、モノハロメタン放出が確認された海洋プランクトンならびに海藻から、それらの放出量とその酵素系について検討を加えた。海洋のプランクトンからは、臭化メチルとヨウ化メチルが放出され、その量はそれぞれ6 ng/g湿重量/h、7 ng/g湿重量/hであった。また海藻からは、ヨウ化メチルのみが放出され、その量は最大21 ng/湿重量/hであった。これらの放出量は、これまで報告された塩化メチルの放出量の約100倍に相当するものであり、これらの藻類が多量のモノハロメタンを放出していることを再確認した。また、これらの藻体から、反応を触媒する酵素の単離・精製を試みた。海藻の酵素は不安定であること、さらに粗抽出液に著量の多糖類を含むことから精製を断念した。海洋プランクトンの酵素は比較的安定であることから、同酵素の完全精製を目指して研究を続けた。しかし、カラムクロマトグラフィーによる活性の低下が著しく、完全精製は進まなかった。そこで、粗酵素液を使用して、本酵素の諸性質について検討を加えた。その結果、酵素反応の速度論的パラメーターの幾つかが測定できた。さらに、モノハロメタンを放出する海洋プランクトンの存在率について現在得られているデータからの算定を行った。本年のデータより、海洋プランクトンの約0.13%程度から臭化メチルが放出されると推定された。
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