研究概要 |
ダイベンゾパラダイオキシン(Dと略記)骨格を有する中性ならびに塩基性物質について、それらの生物活性をinvitroならびにin vivoのレベルで検索した。 1)ダイオキシン(2,3,7,8-テトラクロロ-D)は発癌プロモーターのTPAによるEpstein-Barrウィルス(EBV)早期抗原発現を指標とする発癌プロモーション実験において、高濃度(TPAに対し1000倍のモル比)で発癌プロモーションを抑制する。この場合、Raji細胞に対する細胞毒性は殆ど認められない。2,3,7,8,-テトラブロモ-Dもほぼ同様の活性を示す。発癌プロモーターを加えずに、D誘導体自身の発癌プロモーション活性をみた場合、ダイオキシンは50ng/mlの濃度でRaji細胞に対して発癌プロモーションを起こさないが、2,3,7,8-テトラプロモ-Dは5ng/mlで約3%の発癌プロモーションを示す。 2)ダイオキシンをさらにクロル化すると1,2,3,4,6,7,8,9-オクタクロロ-Dが得られ、また同様にオクタブロモ体も得られる。両オクタハロゲン化体はTPAに対して約1000倍のモル比でRaji細胞の発癌プロモーションを約80-90%抑制する。ダイオキシンならびに2,3,7,8-テモラブロモ-Dと、それぞれのオクタハロゲン化体が共存する場合、発癌プロモーション抑制活性の増強がみられる。いずれの場合もRaji細胞に対する細胞毒性は認められない。 3)1,6-ジブロモ,2,7-ジブロモ-,2,7-ジクロロ-DはTPAに対して1000倍のモル比で顕著な発癌プロモーションの抑制を示し、Raji細胞に対する毒性を示さない。 4)D骨格を有するツヅラフジ科植物アオツヅラフジのアルカロイドtrilobine,isotrilobineはTPAに対して500倍のモル比で、発癌プロモーションを完全に抑制する。
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