研究概要 |
ヒト尿中のウリナスタチン(UT)とα1-ミクログロブリン(α1M)が痴呆性疾患とどのように関係しているかについて検討した。その結果、 1)尿中のα1M量、UT量および両物質量比はアルツハイマー型痴呆患者群、脳血管性痴呆患者群とその対照群において、そのいずれの二群間においても差を認めなかった。 2)アルツハイマー型痴呆患者群、脳血管性痴呆患者群および痴呆を有しない対照群とも尿中のα1MとUTの排泄量の間には正の相関が存在した。回帰曲線の勾配はアルツハイマー型痴呆患者と脳血管性痴呆患者の間に有意差を認めなかったが、両痴呆群の回帰曲線の勾配は痴呆を有しない対照群の勾配とは異なることを認めた。 3)α1MとUTの排泄量比と痴呆の評価点、日常生活動作能力評価尺度との関係をみるとアルツハイマー型痴呆ではスコアの低いほど排泄量比は増加するのに対し、脳血管性痴呆ではスコアの低いほど排泄量比は低下し異なったパターンが認められた。 4)高度な痴呆を示す患者においてその罹病期間とα1MとUTの排泄量比の関係においてアルツハイマー型痴呆では罹病期間が長いほど排泄比は低下したが、脳血管性痴呆患者では低下しなかった。 5)アルツハイマー型老年痴呆患者において、α1Mの排泄量は痴呆の重症度をよく反映することを認めた。 これらの成績から尿中のα1MおよびUT量の相互の関係、排泄量比のパタン,α1Mの排泄量の変化を知ることは痴呆の有無、型および進行状況をしる生化学的指標になる可能性をもつことを見い出した。
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