まず、浮世絵風景画とヨーロッパ印象派風景画の構図の特徴について考察した結果、両者がきわめて類似していることを明らかにした。ついで、浮世絵風景画の統計的分析の結果、従来の定説である近景、中景、遠景の3つに加えて、超近景の存在を明らかにすることができた。ついで、超近景、近景、中景、遠景の各距離景ごとに描かれている物理的構成要素(河川、海、田畑、並木、樹木、林、山、丘陵地、街道、建物等)を列挙し、数量化III類分析、クラスター分析を行い、5つの基本的構成要素と8つの典型景観を明らかにした。すなわち「山間」「田園」「海」「河川」「街中」の基本的構成要素で浮世絵風景画が描かれていること、そして「山間の街道の景観」「田園に街道のある景観」「田園に河川のある景観」「河原の景観」「海辺の景観」「街道と建物の景観」「湖を見下ろす景観」「街中の景観」の8つの典型景観の構図があることを明らかにした。
|