研究課題/領域番号 |
05455017
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
萩島 哲 九州大学, 工学部, 教授 (70038090)
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研究分担者 |
坂井 猛 九州大学, 工学部, 講師 (30253496)
出口 敦 九州大学, 工学部, 助教授 (70222148)
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キーワード | 景観 / 浮世絵風景画 / 水景 / 仰角 / 視点場 / 距離景 |
研究概要 |
まず、浮世絵風景画に描かれている「水」「緑」「建物」の各要素を個別に把握した。 (1)湖、海の景は、俯瞰景が多く、視点場は水際まで移動することはない。河川では多様な機能が描かれる。生活用水としての水景など親水性あふれる様子が描かれる。 (2)緑の景では、アカマツ、クロマツ等の樹種が多く描かれている。それは、並木、屋敷林、宿場の出入口に配した樹木等、緑が実用的機能をもっていること、同時に樹木を画面の左右に配した景観的機能ををもっていることが明らかとなった。 (3)建物の景では、草葺き、板葺き、瓦葺き等の屋根、格子、障子、引き戸等多様な形態の開口部が描かれ、宿の2階が視点場となっている様子も描かれた。 ついで、絵画と現地の風景との比較を行い、以下のことが明らかになった。 (1)街道上のアプローチが容易な視点場から描いている。当時どこでも見られたであろう日常的な生活景が描かれている。 (2)実際の風景からの比較から、浮世絵風景画には「俯瞰化」「実景描写」「移動配置」「デフォルメ」「スケールダウン」「削除」「付加」といった手法が用いられている。 (3)遠景要素の山は、仰角10度以内、平均で4.9度である。10度以上の山を描くとき、「スケースダウン」して描かれている。 (4)都市部では、実景に近い描写、平野部では構成要素が「デフォルメ」され、遠景に山等が「付加」されている。水景では、中遠景で、実現には見られないような山を「移動配置」して描いている。山間部の描写では、中遠景で、あるべき山等が「削除」されて描かれている。
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