研究概要 |
平成5年度には,まず簡易版携帯型可視分光センサーを用いて,可視光領域での岩石の色のスペクトルを実験室および野外で測定した.用いた分光センサーは波長分解能が10nm以上の粗いものの,400-700nmの範囲の岩石の反射スペクトルを3秒で得ることができ,また色の定量的パラメータL^*,a^*,b^*を用いて,岩石の色を定量的に表現できた.まず,実験室では,代表的な鉄鉱物2種(赤鉄鉱Fe_2O_3と針鉄鉱FeOOH)とシリカSiO_2の混合粉体を調合して,スペクトル及び色のパラメータの変化を調べた.また粉度の粒体や水分の影響を調べ始めている.さらに,岐阜県犬山地域のチャートの色を野外で測定し,これらの基礎データに基づいて解析した.その結果,犬山チャートの下位から上位への黒,緑,黄,紫,赤という色調の変化のうち黄赤系の変化は,針鉄鉱と赤鉄鉱の増加に対応することがわかった.これは,チャート試料の化学分析による全鉄中におけるFe^<3+>の割合の増加傾向と調和的であり,環境が次第に酸化的になったことを示唆する. 一方,可視から近赤外にかけての広い波長範囲を精度良く測定できる携帯分光センサーの設計を行い,試作中である.試作第1号機は,十分に携帯性があり,380-2500nmの範囲を5nm以下の波長分解能で30秒以内で測定することができた.この波長範囲では,上記可視センサーでは分析できなかった2価鉄の吸収帯(1000nm付近)や水(1400,1900nm付近),さらには,天然有機物の官能基のいくつかの化学形態の迅速分析ができる見通しができた.
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