研究概要 |
本年度は先ず,可視近赤外分光センサーを用いて,野外での測定試験を行なった。測定は,珪藻土,珪質頁岩,チャート,石灰岩などについて行ない,各々の岩型に特徴的でかつ再現性の良いスペクトルを得た。一方で,1回のバッテリ-充電で測定できる回数が予想よりも少ないことが判明した。しかし、この問題は,自動車のシガ-ソケット電源を利用することによって,多くの場合解決できる。また,日本海深部海底より得られたピストンコアについて,可視および近赤外スペクトルの測定を2cm間隔で10mに渡って行ない,スペクトルパターンの深度変化を調べた。また,スペクトルパターンの深度変化の原因を明らかにするために,約80のコア試料について主要鉱物組成,主要化学組成,有機炭素含有量,炭酸塩炭素含有量の分析を行ない,スペクトルとの相関を調べた。その結果,これらの試料の可視近赤外スペクトルは有機炭素および黄鉄鉱に大きく影響され,可視領域の反射率は有機炭素と比較的良く相関し,近赤外領域ではむしろ黄鉄鉱含有量との相関が高い事が明らかになった。また,このコアの含水率が比較的一定しているにも拘わらず,1400nmおよび1900nm付近の水による吸収の強度が試料によって大きく変動し,黄鉄鉱含有量が高いほど吸収強度が低くなる傾向がある事が明らかになった。これは,黄鉄鉱微粒子の反射・散乱により光が表面から深く透過することを妨げいるためと考えられる。この点を更に解明するため,不透明粒子濃度の水による吸収の強度への影響を実験的に調べた。その結果,黄鉄鉱に限らず,不透明粒子の存在が水による吸収の強度に影響すること,粒度もまた,吸収強度に影響する事が明らかになった。このような可視近赤外スペクトルの性質を利用することにより,堆積物の含水率,粒度や,有機物含有量,黄鉄鉱などの近赤外領域で不透明な粒子の含有量などに関する情報を得る事ができると期待される。
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