研究課題
(I)制振性本合金の制振性はepsilon→gamma変態の中間の温度において著しく向上するが、この温度はNi量とMn量によって強く支配されるので、平成5年度の主要課題として本合金系における最適組成の追及を行った。両元素の比率を変えた16鋼種について実験を行った結果、下記の回帰式を得た。epsilon→gamma変態温度(℃)=256.1-19.7Ni(mass%)-6.7Mn(mass%)上式に従えば、変態温度区間を室温(25℃)付近まで下げるにはFe-6Ni-14Mnが適していると考えられる。事実この合金はFe-5Ni-15Mnより数倍も高い制振性を示したが、NiやMnがこれより僅かでも多くなると組織gamma(オーステナイト)単相となり、制振性は極端に悪化することが判明した。従って、鋼種としてはFe-5Ni-15Mnの方が実用的であるとの結論に達した。(II)機械的性質機械的性質についてはgamma量が多くなると耐力は下がる傾向にある。Fe-6Ni-14MnとFe-5Ni-15Mnについては適当な前処理によって超弾性特性の発現が認められた。またSiを添加すると形状記憶特性も現れることが判明した。(III)コルゲーション試験加振器により軌条輪と車輪の加速度応答を調べる。この応答曲線からハーフパワーポイント法で減衰比を求め、SUSなどの結果と比較したが、あまり差はみられなかった。(IV)耐磨耗性試験ピンオンディスク試験により耐磨耗性が調べられた。本合金は比較材料の鋳鉄などに比べても良好な耐磨耗性を有している。