研究課題/領域番号 |
05508002
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研究種目 |
試験研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
自然災害科学
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石坂 隆 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助教授 (50022710)
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研究分担者 |
稲毛 正昭 三井建設, 土木本部, 研究員
山田 正 中央大学, 理工学部, 教授 (80111665)
遊馬 芳雄 北海道大学大学院, 理学研究科, 講師 (10183732)
太田 幸雄 北海道大学, 工学部, 教授 (00100058)
播磨屋 敏生 北海道大学大学院, 理学研究科, 教授 (90001859)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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キーワード | 立坑 / 人工雲 / 酸性雨 / 雲物理 / エアロゾル |
研究概要 |
本研究の目的は、地下の鉛直立坑を利用して準実スケールの人工雲を作り、本実験装置の自然災害研究への有用性と、より高度な実験を行なうことのできる実用化実験装置への発展可能性を明らかにすることにあった。実験は、平成5年度は三井石炭鉱業(株)所有の立坑を、この立坑が閉鎖された後の平成6,7年度は、釜石市にある釜石鉱山(株)所有の立坑を利用して行なった。研究成果として、先ず、世界で初めて、エアロゾルを含む現実大気と、不純物の無いクリーンな大気との温度・湿度構造の違いを実証したことがあげられる。本実験では、エアロゾルを含む現実大気の気温・湿度と理想大気のそれとのズレをも実験的に検証し、本実験装置で辛うじて検出できるような気温・湿度の理想大気からのズレが、雲水量で一桁、アルベ-ドでも3倍近い差となって現われることを明らかにした。次の成果として、世界で初めて理論と対応可能な雲内の湿度の詳細な分布測定に成功したことが挙げられる。更に、世界で初めて凝結核数の変化が雲粒の粒径分布に及ぼす効果を実験的に立証したことが挙げられる。この効果はツ-ミ-効果と呼ばれ、理論的には以前から予測されていたものであり、人間活動が地球環境に及ぼす影響の根幹をなすものである。従って、本立坑を用いて、理論では表現しきれない複雑な組成をもった、各地で実現にサンプリングされたエアロゾル或いは模擬エアロゾルから、どのような粒径分布を持った雲が発生するかを実験的に調べることが可能である。その他、雲内でのエアロゾルの変質、ガスの雲粒への吸着現象、雲水の化学成分の高度変化も確認されている。これらの実験を繰り返すことにより、これまでは理論的には式が立っていたが実際の係数が分からなかった、雲を介在とした種々の大気化学反応式を解くことが可能である。以上の成果は、将来の応用実験の可能性を大きく広げるものであり、本立坑の実験装置としての有用性を確認するものである。
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