本研究は電子線を用いた蛋白質結晶解析を行うため、データ収集に必要な装置(電子顕微鏡)とソフトウェアを開発することを目標としている。これまでの電子顕微鏡では、低電子線量での像撮影と回析パターンの撮影とが有機的に結合されるようにはできていなかったので、そのためのソフトウェア(ファームウェア)の開発が主眼となった。 1.電子線回析データの連続収集のためのソフトウェアを開発し、GATAN製社CCDテレビカメラを用いて実験を行った。その結果、回析パターンの平均化操作によってかなりの信号対雑音比の向上は認められたが、限界があることが判った。これは、用いたテレビカメラの増幅度をあまりあげられないことと、CCD素子自体が冷却されていないため雑音が多いことによるものと考えられる。 2.回析パターンから結晶の方位を決めるためのソフトウェアの開発を行った。これによって、カルシウムATPase三次元微結晶の氷包埋電子顕微鏡像のいくつかについて、投影方法を決定できることを確認した。 3.低電子線量撮影のファームウェアの開発を行った。これによって、低電子線量での回析パターンの撮影は非常に容易になった。また、傾斜した試料の像撮影のため、フォーカスを多点であわせられるようにもなった。さらに、試料グリッドの縁近くに位置する試料の撮影も容易になった。また、モード間の移行に際してビームをカットする新手法の検討も行った。
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