1.試作した軟X線ラマン散乱スペクトル測定用湾曲結晶分光器の性能評価 (1)分光結晶としてRAP(2d=26.12A)及びADP(2d=10.64A)を用いて、分解能のチェック、波長スキャン機構の信頼性のテストを行った。X線の励起には電子線を用いて行った。 (2)分光器を自動的にスキャンしデータ収集するシステムとしてパーソナルコンピュータを用いているが、その分光器駆動用、計測系制御用、データ処理用のプログラム開発を行った。 2.軟X線ラマン散乱スペクトルの測定 湾曲結晶分光器を高エネルギー物理学研究所放射光実験施設に持込み、SiおよびSiO_2のSi-K吸収端における共鳴発光、共鳴オ-ジュスペクトルの測定を行った。実験は軟X線アンジュレータからの軟X線ビームをInSbを分光結晶とする2結晶分光器により単色化し、Si単結晶に照射して行った。この単色化した放射光の光子エネルギーをSiのK吸収端の低エネルギー側から高エネルギー側まで10数点変えて、それぞれの励起エネルギーに対する発光スペクトルの測定を行った。その結果、吸収端より低エネルギー側で励起した場合、発光スペクトルのピークエネルギー値が励起光エネルギーの変化に対してリニアーに変化し、かつ発光スペクトルの形状が低エネルギー側に尾を引く形状を示すことからラマン散乱過程によるスペクトルであることが判明した。また発光スペクトルの強度が励起光エネルギーが吸収端に近づくにつれ共鳴的に増大することから共鳴ラマン散乱スペクトルであることも判明した。同様の結果はSiO_2においても得られた。
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