研究概要 |
本研究の最終的な目標は0.1〜5mHの周波数帯における多成分かつ高感度の加速度計測(分解能1ngal以下)を実現する地球物理学的な観測器機の開発と実用化にあるが、このためにフォースバランス・フィードバック方式のリ-フスプリング・センサーの改良とテストを行った。本研究の年度内に、(1)既存の広帯域地震計を改造して常温近傍で環境を精密に制御することにより、100ngalレベボルの分解能の加速度計測を行っている。(2)気圧や温度などの環境変化とそれによるノイズを徹底的に考察とその軽減方法を再検討した結果をふまえて、センサーを収納して真空あるいは減圧軽ガスを封入する耐圧容器の設計開発を進めた。(3)これまでのセンサー内外の気温や気圧などの環境変化のモニターの結果、センサー内外の温度変化を加速度出力に約1秒から1万秒の範囲で非常に強い相関が見られた。そこで観測壕内から記録室に至る信号の伝送をテストし、センサー及び収録器の特に温度変化に敏感な部分を観測壕の奥に設置する準備を整えた。観測壕工事の都合により移設が遅れているが、これによって温度変動は千分の数度以下に抑えられることが期待される。さらに測定周波数帯域を狭めるためのアナログバンドパスフィルターの低ノイズ化(1mHz付近1/6decade当り1nV程度)を検討した。(4)前年度開発したリモートコントロール式キャリブレーション・システムを用いてセンサーの各種テストを行い、約100dbの信号レベルの範囲で出力の線形性がほぼ保たれていることを確認した。さらに、江刺観測隊に並列して設置とされている超伝導重力計やラコステ重力計の出力とのより精密な比較測定とデータ解析を通して感度や安定度あるいはノイズレベルの検討を行った。また各種のセンサー性能評価の際に重要となる江刺での超長周期地動ノイズモデルを作成した。(5)潮汐信号除去に用いるフイ-ドバック・システムのためのデジタル・フイルターを開発した。(6)上記センサーの開発においては,更にノイズを減少させるため将来的に極低温容器中にセンサーを収納する予定である。そこで極低温中で使用するスプリング材料の選定等そのための技術的諸問題を整理した。
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