色素(pH指示薬)を用いて海水pHの高精度測定を行うために瞬間マルチ測光システムを検出器とする半自動海水pH測定システムを作製した。このシステムの特徴は、次の3点にある。1.細管を通しながら大気と接することなく海水を指示薬と混合し、一定温度にした後に、検出器に導入できる。2.送液ポンプとポンプチューブの選択により指示薬と試料の混合比を1:250と指示薬による影響が無視できる範囲に設定されている。3.流路に突起をつけたガラス管(内径3mm)を15cm狭みこみ、試料と指示薬の混合を十分に行なっている。 海水組成の塩を含むトリス緩衝溶液(pH7.4〜8.2)を試料とし、指示薬としてクレゾールレッドを用いたときの繰り返し精度は、±0.001以下となり、海水中の炭酸系の僅かな変化を読みとるのに必要な精度が得られた。ガラス電極で測定したpHとの差は、適当な関係式を導入するかまたは指示薬の吸光値をpHに換算する式の係数を文献値と異なるものを使うことによりなくすことができた。また、色素としてメタクレゾールパープル、チモールブルーについても検討した。それぞれpH7.6〜8.4、pH7.8〜8.6で高精度分析が可能であることがわかった。 船上に本システムを持ち込み、測定を試みたところ、電極による測定結果と鉛直分布の様相は一致したが、室内での検討と同じように0.06から0.12の系統的な違いがみられた。この差は、吸光度からpHを算出する式の定数あるいはpHメーター校正用の標準溶液が海水組成でないことに起因している。なお、前述の室内実験で得た関係式により補正すると両測定値をほぼ一致させ得た。 海水に一定量の酸を加え、ブロムフェノールブルーを指示薬としてpHを測定し、結果からアルカリ度を算出する方法も試みた。これにより、誤差はあるもののより高精度なアルカリ度の測定が可能であることが示せた。
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