研究概要 |
抗がん性化合物Varacinの全合成のためのアプローチとして、前年度(5年度)の成果を踏まえ、本年度は次の(1)と(2)の二つの事項について検討を行った。 (1)新規なベンソペンタチエピンとして、6,7-ジメトキシベンゾペンタチエピン(1)と6-(2-アミノエチル)ベンゾペンタチエピン(2)の合成を検討したところ、1は1,2-ジメトキシベンゼンから4段階の反応により全収率22%で、2は1,2-ベンゼンジチオールから10段階の反応を経由することにより全収率71%で合成することに成功した。両者の合成において、ペンタチエピン部分の構築は単体硫黄/アンモニアの反応を応用している。 (2)(1)で得られたベンゾペンタチエピン類の子宮頚癌由来のHeLaS_3細胞に対する細胞増殖阻害活性試験を行ったところ6-(2-アミノエチル)ベンゾペンタチエピン(2)の塩酸塩が試験した化合物中、最も強い細胞毒性を示した。また、官能基あるいは構造活性相関が認められ、ペンタチエピン部分が細胞毒性発現において重要な役割を果たしていることを示唆する興味深い結果が得られた。 以上のように抗がん性化合物Varacinの抗がん剤への実用化に関する重要な情報を得ることが出来た。
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