生体の高次構造と機能の解析を目的とした蛍光実体顕微鏡の開発

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05554028
• 研究機関: 姫路工業大学
• 研究代表者: 三村 徹郎 姫路工業大学, 理学部, 助教授 (20174120)
• 研究分担者: 新免 輝男 姫路工業大学, 理学部, 教授 (80114510) ; 石田 敬雄 (株)スカラテック, 代表取締役 ; 佐藤 和彦 姫路工業大学, 理学部, 教授 (00090522) ; 寺島 一郎 東京大学, 理学部, 助手 (40211388)
• キーワード: 画像処理 / クロロフィル蛍光 / 蛍光測定 / 光合成 / 細胞内pH / 細胞膜電位 / 実体顕微鏡 / 植物組織

研究概要

生物学領域において、蛍光測定法は通常の光学的測定・観察のみでは得られない種々の情報を与える。特に蛍光顕微鏡と各種の蛍光物質を用いた研究は、これまでの光学顕微鏡では観察不可能であった細胞内構造や、細胞内pH分布・Ca^<2+>分布という物理的性質の変化などを生きたままで観察することを可能にした。また、植物ではクロロフィルの自家蛍光を利用して細胞内葉緑体のエネルギー状態を明らかにする方法も開発されている。本計画は、実体顕微鏡レベルの広視野に蛍光顕微鏡としての機能をつけ加え、現在細胞レベルの研究のために開発されてきた各種蛍光測定法を利用して、多細胞体の組織・器官における生命活動を、個々の細胞と同様新しい側面から明らかにしようというものである。
現在、クロロフィル蛍光の誘導現象及びノンフォトケミカルクエンチングの測定のための励起光照射・蛍光取り込み装置の設計を、若干の変更を加えつつ進めた。特に、キセノンランプからの光路絞り・シャッター、フィルター変更装置等はコンピューターから完全制御できるようにした。また、この蛍光装置は励起光照射部に様々な工夫を行っているため、本研究が目的とする広領域蛍光画像用としてばかりではなく、通常の顕微鏡像においても新たな知見を得ることが可能である。そこで、照射装置組み込み部に工夫を行い、一般の落射蛍光顕微鏡装置にも使用可能な様に設計を変更した。一方、研究費総額との関連から、市販実体顕微鏡に装置を組み込み、肉眼観察を可能にすることは諦め、ビデオカメラのみで画像を取り込むようにした。また、画像記録装置としてビデオレコーダーを使用せざるを得ないため、コンピュータープログラム上で画像処理の工夫を行いデーター取り込み速度の遅さをカバーできるようにしつつある。

研究成果

• [文献書誌] Mimura,T.: "ATP-dependent carbon transport in perfused Chara cells." Plant,Cell & Environment. 16. 653-661 (1993)
• [文献書誌] Beilby, M.J.: "The proton pump,high pH channels, and excitation: voltage clamp studies of intact and perfused cells on Nitellopsis obtusa." Protoplasma. 175. 144-152 (1993)
• [文献書誌] Tazawa,M.: "Intracellular mobilization of Ca^<2+> and streaming inhibition induced by transcellular osmosis in Nitella flexilis." Plant & Cell Physiology. 35. 63-72 (1994)
• [文献書誌] Mimura,T.: "Characterization of Ca^<2+>-dependent Cl^- efflux in perfused Chara cells." Plant & Cell Physiology. (印刷中).
• [文献書誌] Maeshima,M.: "Distribution of vacuolar H^+-pyrophosphatase and a major membrane integral protein in a valriety of green plants." Plant & Cell Physiology. (印刷中).
• [文献書誌] 三村 徹郎: "植物細胞におけるリン酸輸送とリン酸ホメオスタシス" 根の研究. 2. 89-92 (1993)