研究分担者 |
串田 正人 千葉大学, 工学部, 助手 (70177989)
神谷 幸司 千葉大学, 工学部, 助手
工藤 一浩 千葉大学, 工学部, 助教授 (10195456)
幸本 重男 千葉大学, 工学部, 助教授 (90195686)
原田 義也 千葉大学, 工学部, 教授 (20013477)
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研究概要 |
本研究では、超低速電子透過法(LEET)による信号電流強度が、数分子層程度以下の膜厚領域において極めて鋭敏に膜厚に依存することを利用し、機能性有機分子超薄膜の単分子層成長を損傷を与えることなく検出、測定できる方法を確立し、さらに基本的に重要な有機分子の清浄導電性単結晶表面における単分子層成長条件を探索することを目的とした。このため、始めに超低速電子透過法と他の表面敏感実験法を同一の既知の試料に適用し、超低速電子透過スペクトル構造と試料表面構造の関係を明確にし、次に超低速電子透過法により機能性有機分子単分子層成長条件についての探索を行った。また、本方法で配向膜成長を調べた有機分子薄膜の定量的な構造決定,電子状態を中心にした物性研究を,放射光励起角度分解光電子分光(ARUPS),高分解能電子エネルギー損失分光(HRLEELS),ペニングイオン化電子分光(PIES)などの実験法を併用して行った。本研究で得られた主な結果をまとめると以下の通りである。 (1)本研究遂行に適した分子薄膜成長測定用超高真空チャンバーを制作した。 (2)MoS2基板の低速電子回析(LEED)、オージェ電子分光(AES)、HRLEELSとLEET実験を行い、表面の清浄性とLEET結果を定量的に比較し、LEETスペクトルのみによって結晶表面清浄性の検査が正確に行えることがわかった。 (3)MoS2表面の鉛フタロシアニン,H2フタロシアニン,Cuフタロシアニン,AlClフタロシアニン単分子層の成長をLEETスペクトル構造変化およびLEETによる仕事関数変化検出で検出することができた。これらの結果を PIES,HRLEELS,LEED,ARUPS測定により総合的に確認した。 (4)LEETによって単分子膜形成条件を決定した後、MoS2上でのH2-,Cu-,AlClフタロシアニン単分子膜中の分子傾斜角,面内這配向角をARUPSにより決定することに成功した。 (5)MoS2清浄表面上のフタロシアニン分子薄膜の成長をLEET法で追跡し、単分子層の形成後、膜厚増加により分子配向が変化することを観測した。また分子表裏の区別のあるAlClフタロシアニンでは第1分子層ではC1原子が表面の外側を向いており,第2分子層を蓄層すると2分子層目の分子は表裏が反転することを突き止めた。 (6)機能性有機分子、基板結晶の組み合わせに対して蒸着条件(基板温度、蒸着速度)を変化させてLEET実験を行い、分子層成長が可能な組み合わせ、蒸着条件を探索した結果、第一分子層をきれいに配列させておくと層状成長した有機超薄膜の作成が可能であることを突き止めた。
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