オプトエレクトロニクス・超高速エレクトロニクスのデバイス・集積回路の作製に必要不可欠なIII-V族化合物半導体ウェーハ中に残留する歪みの二次元分布を、光弾性法を用いて微視的に定量評価する二種類の顕微赤外光弾性装置を試作することを目的とし、今年度は高感度・高精度を目指した走査型の改良と高空間分解能で高速測定できるマルチチャンネル型のものの試作を行った。 走査型光弾性装置は、測定時間の短縮化を改良の中心課題とし、従来のpoint-by-point測定(PPM)方法に変えて、新たに螺旋走査測定(SSM)方法を考案した。SSM方法を用いることによって、2インチウェハで200×200の格子点数を測定するのに、従来PPM方法では約30時間の測定時間を要していたのを約4時間に短縮でき、ほぼ実用に供する装置となった。この装置の仕様や性能を次頁に示す国際会議にて公表した結果、多くのウェハ製造企業やデバイス製造企業の研究者に高い評価を受けた。 マルチチャンネル型光弾性装置の試作では、マルチチャンネル検出器として用いるTVカメラ(可視域:CCDカメラ、赤外域:ビジコンカメラ)から出力される多量の画像データを光弾性効果に基づいて高速処理し、残留歪み分布を計算するシステムとプログラムを開発した。可視領域のCCDカメラを用いたマルチチャンネル型光弾性装置を試作し、GaP単結晶の残留歪みを評価した。一様残留歪み分布を高空間分解能で高速測定できることを示したが、実用化には測定のダイナミックレンジをさらに向上することが今後の重要な課題であることが明らかとなった。
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