オプトエレクトロニクス・超高速エレクトロニクスのデバイス・集積回路の作製に必要不可欠なIII-V族化合物半導体ウェーハ中に残留する歪みの二次元分布を、光弾性法を用いて微視的に定量評価する二種類の顕微赤外光弾性装置を試作することを目的した。その一つは高感度・高精度を目指して、一点毎に測定する走査型光弾性装置で、もう一つは高速測定を目指して、多数点を同時に測定するマルチチャンネル型光弾性装置である。 走査型顕微赤外光弾性装置に関しては、心臓部である回転偏光子・検光子の製作を種々試みるとともに、新しい測定方法を考案した結果、測定精度、測定時間ともに実用に供する装置を完成した。空間分解能に関しては、赤外半導体レーザを用いることにより、数10μmまでの分解能を得た。試作した走査型光弾性装置を用いて、種々の化合物半導体ウェーハ(LEC-GaAs、LEC-InP、VCZ-GaAs、VCZ-InP、HB-GaAs)の残留歪みを評価した結果、結晶成長技術の向上のための実用的な評価装置として極めて有用であることを示した。また、デバイス作成のための熱処理時のスリップ転位発生問題などにも残留歪みの評価が有用であることを示した。さらに、高空間分解能で測定することによって、ウェーハのキズや結晶内部にあるボイドようのものまで明確に観測できることを示した。 一方、マルチチャンネル型光弾性装置に関しては、マルチチャンネル検出器から出力される多量の画像データを光弾性効果に基づいて高速処理し、残留歪み分布を計算するシステムとプログラムを開発するとともに、可視光領域でのマルチチャンネル型光弾性装置を試作し、高空間分解能で高速測定できることを示した。この方式の欠点であるダイナミックレンジを向上するため、光源として発光ダイオードをパルス動作させる新たな手法を考察した。
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