前年度に作成したファイバプローブを用いてフォトンSTM装置を組み立て、その性能を評価した。評価のための標準試料として直径25ナノメータのサルモネラ菌鞭毛を用いた。コレクションモード(試料裏面から光を照射し、発生するエバネッセント光をプローブで集める方法)で測定を行い。分解能約5ナノメータでの画像計測に成功した。また、その分解能はファイバプローブ開口の増加、プローブ・試料間距離の増加とともに劣化することを確認した。これは我々が過去に提案している現象論的な理論モデルである「仮想光子モデル」による解析結果と一致することがわかった。さらに、画像の特徴が入射光の偏光依存性を持つことが見いだされたが、これは試料表面に発生する光誘起分極の空間的分布、方向により決まることがわかった。 一方、イルミネーションモード(プローブ先端からエバネッセント光を発生し、試料を照明する方法)の性能を評価するために、ニューロンを試料として用いた。特に、ニューロン軸索の内部にある公称直径25ナノメータ(電子顕微鏡による測定値)の毛細管の束を、軸索から取り出すことなしに画像計測することができた。このときの直径は25ナノメータと測定された。これは上記の公称直径と同等であり、生体試料測定において、本フォトンSTM装置は電子顕微鏡と同等の分解能を有することがわかった。なお、ここでは試料表面を導体化することなく、また毛細管を軸索から取り出す事なく、さらに高真空を用いる事なく空気中で測定しており、これらのことから本装置の性能の高さが確認された。
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