研究概要 |
我々が考案し,基礎動作の確認に成功した変形ファブリ・ペロ-(FP)変調器は連続光からピコ秒およびフェムト秒領域の超短光パルスを効率よく生成することができる.本年度は実用性の向上と評価を目的として,以下のように研究を進めた. コンピュータを用いたデジタル制御による,光共振器安定系を試作し,安定化実験を行い,安定度の評価を行った.その結果,入射側FPフィルタの安定化と制御が短期的には達成できることを確認した.しかし一般に用いられているガスレーザ程度の周波数安定度では,長期的な安定性には問題があり,これは帰還系の応答速度の高速化によって改善できることがわかった.そこで,従来はレーザの周波数安定化に利用されているPound-Drever法を逆にFP共振器の制御に利用して,FP共振器を揺らぎのあるレーザに追随させる方法を試み,予備実験によって十分高速に誤差信号が検出できることを確認した. 変形FP変調器の内部に挿入する光位相変調器は,変調周波数が高く変調指数が大きいほどよい.そこで,新たにマイクロ波疑似速度整合形光変調器を試作し,単体のパルク形変調器では極限状態に近い大振幅位相変調実験を行った.その結果,変調周波数16.25GHzにおいて,変調指数90rad,スペクトル広がり約3THzを得た.このような光位相変調器を挿入することにより,結晶の分散限界に達する数十フェムト秒の光パルスが生成可能であることがわかった. 本研究により,変形FP変調器が高効率フェムト秒光パルス発生器,数十テラヘルツ超広帯域光サイドバンド生成器としてきわめて実用性が高いことが示された.今回は試作には至らなかったが,モノリシック化,集積化によってさらに高性能化が期待される.
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