本試験研究では長寿命遷移を用いてCa原子をレーザ冷却するためのラビサイクル冷却用光変調装置を試作し、その冷却性能を評価する。平成5年度はラビサイクルレーザ冷却を行なうために必要となるレーザ光源の条件について検討し、その条件を満たす光変調装置を試作した。平成6年度は、引き続き、ラビサイクル冷却に必要な条件をシミュレーションにより求めた。その結果ラビサイクル冷却を実現するためには、以下の条件を満たす必要がある。 1)吸収光と誘導放出光の周波数は共鳴周波数に対してほぼ対称になる。 2)完全なπパルスを実現する。この要求精度はサイクル数が多いほど厳しくなる。 3)1パルス毎にレーザー周波数を反跳による減速分だけシフトする。 4)減速スピードと周波数掃引スピードを一致させる。 5)パルス幅は短いほうが望ましい。 6)原子が見る最初のパルスは吸収πパルスであることが望ましい。 この結果をもとに実際の装置の設計をCa原子の長寿命遷移で行なった。現在、設計された装置を実現するべく装置の開発を行なっている。既にπパルスの作成装置についての研究は終え、一度光学系を組み立て、実際にCa原子に照射する実験を行なった。しかし、レーザ冷却装置を完成するためには指摘されたように早い周波数掃引が必要で、そのタイミング回路を現在試作中である。シミュレーションの結果にあるように、如何に性格なπパルスを実現できるかで減速できる範囲が決まる。それゆえ、本方式は初段の減速より、ある程度冷却された原子の冷却に向いている。
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