研究概要 |
酸化物超電導体は,液体窒素温度(77K)で超電導が発現することから導体材料として期待されている.本研究は,Y_1Ba_2Cu_3O_<7-X>(以後YBaCuOと称する)薄膜の導体の適用研究として,マイカ(001)薄板上に(111)に配向した銀膜,さらにその上に熱処理なしてc軸に配向したYBaCuO膜を作製し,その最適合成条件を明らかにし,超電導導体としての性能評価を行ったものである. まず,rfマグネトロンスパッタ法により、マイカ(001)上に銀(111)配向膜を作製するための最適条件の検討を行った.X線分析結果から,基板温度200℃,電源出力40W,スパッタ時間40分で厚さ役2μmの銀(111)配向膜を作製できることがわかった.この膜は,結晶方位も揃ったほぼ単結晶に近い銀(111)高配向膜であった.次に,得られた銀(111)高配向膜を用いてYBaCuO膜の合成条件を検討した.基板温度が高くなるにつれて,銅の組成比がYに対して減少していく傾向がみられたので,ターゲットにCuOを添加して,CuのYに対しての組成化を3.5にすることによって,最適な膜の組成化を得た.超電導特性の評価は交流磁化率による臨界温度の測定により行った,基板温度と酸素分圧について検討を行った結果、基板温度620℃,酵素分圧6.36×10^3Torr,電源出力150W,スパッタ時間180minで合成を行うことにより,膜厚1μmで臨界温度84KのYBaCuO膜が得られることがわかった.またその条件で作製した膜のX線分析結果からYBaCuO膜はc軸に配向していることがわかり,さらに極点X線分析結果からa,b軸も銀(111)の結晶配向に沿った三方向に結晶方位が揃っていることがわかった.これらの結果,本研究で提案した導体化プロセスはYBaCuO薄膜を用いた導体化法として十分使用できることがわかった.
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