研究概要 |
超伝導マグネット用構造材料の機械的特性の把握は健全な設計には必要である.本研究では研究代表者が過去行ってきた極低温の材料のトライボロジー特性の検討のために必要な硬さを測定することを目的として極低温ビッカース硬さ計の開発を行ってきた. 昨年度は装置の設計と製作,77K(液体窒素温度)までの材料の硬さを測定することにとどまった.従って,今年度は4.2K(液体ヘリウム)までの測定を可能とすることを第1の目標とした.昨年度の問題点は軸受が液体ヘリウム挿入時に凍結したことにあった.そこで軸受を脱脂した.その結果6種類の材料に対し,4.2Kでの硬さを測定することができた.また液体ヘリウムの蒸発に伴う試験片の温度上昇を利用して4.2Kから室温までの硬さを測定できた. 硬さの温度依存性で特異な傾向は,室温から77Kまでは温度の低下と共に硬さが上昇するが,それから温度の低下に対して硬さは一度低下した後,再び上昇する傾向が測定した材料すべてにみられたことである.この結果,77Kと4.2Kの硬さを比較するとJN1やCuでは77Kの方が硬さが大きい.他の材料では4.2Kの方が若干高くなる.この特性をアレニウスの式で現すと77K以上と4.2K〜70Kまでの2本の線で示される.このことは変形機構が77K付近の温度で大きく変化することを意味していると考えられる. 硬さと機械的特性(降伏応力,引張強さ)を比較すると,従来いわれてきた硬さがそれらより3倍大きいという関係はみられず,降伏応力に対しては約8倍,引張強さに対しては(3〜5)倍という結果を得た.これらの関係は文献の値から求めたが,今後は同一材料で比較することで,機械的特性の推定として硬さ試験の結果を利用できる可能性がある. 硬さ試験機としては今後高感度の変位計を用いることで変位荷重曲線から硬さを評価する方法の開発が残されている.
|