研究概要 |
下肢障害者用の移動機械として人間が搭乗して操縦し移動する形式の歩行機械を対象とし,その脚機構の総合および試作実験による基本的な歩行特性の解析を行った. まず,本歩行機械が人間の活動環境内で移動することを想定し,歩行機械に求められる大きさの限界(例えば横幅が800mm以下)や適応すべき段差の高さ(約200mm)などを調査し,歩行機械の諸元ならびに歩行機械に具備すべき機能を具体的に決定した.また最も基本的な歩行状態である水平面定常歩行時には,搭乗者の手動入力でも移動が可能なように,1軸まわりの回転入力で消費エネルギーの少ない歩行を実現する脚機構の構成を明らかにした.すなわち2自由度パンタグラフ脚機構に水平面直進歩行用の1自由度近似直線創成機構と足部相対位置調整用の2自由度調整運動創成機構を組み込んで足関節の鉛直面内の運動を創成し,足首部に鉛直軸回りの回転運動創成機構を配することで旋回運動を創成する構成である.そして具体的に機構の形式,配置,寸法および入力運動を定めた. 次に,歩行機械の小形・軽量化を図る観点より,パンタグラフ脚機構の脚節同士の干渉や階段歩行時の脚節と階段との干渉などを考慮した総合条件を定め,所要の作業領域が得られる一般的な総合法を導出した.さらに動力伝達要素などの設計においては実際の干渉解決策やモジュール構造化を適用し,小形化や整備性の向上を図った. 最後に,以上の理論的考察を基に実際の歩行機械(全高1179mm,全質量131kg)を試作し実験した結果,所期の運動の創成および多少の凹凸のある水平面上の定常歩行における姿勢の安定な保持といった基本的な歩行機能が実現された.
|