電気自動車の駆動系の重要な課題として、バッテリの消費を節約しながら通常の交通の流に乗れる加速性能をいかに得るか、さらに減速時のエネルギ回生をどのように効率良く実現するかというテーマがある。通常の試験システムでは、インバータによる制御に頼っているが、部分負荷における電気モータの性能は高くなく、高い変換効率をえるには特定の動作点における作動が必要になる。また、制動時には、モータを高速回転させ発電機としての性能を十分引き出す必要がある。本研究は、この両者の機能を、インバータに換わる機械式の無段変速機の搭載により実現しようとするもので、平成5年度(初年度)では、自重250kgの小型車両に、36V-80A定格の2.2kWの直巻電動機を駆動源とする小形のトラクションドライブ式の無段変速機(ドライ質量約25kg)を開発・試作した。試作にあたっては、キャビティ半径22mmの小形のものを試作するとともに、変速機構には、動力消費の少ない2重反転ねじの採用とパルスモータの採用により、これまでの油圧制御式に比べ約半分の動力消費ですむ機構を新たに開発した。現在、本装置の単独の効率、変速の応答性、機械振動、補機の消費動力について基本試験を行っており、これらの基本試験が終了次第、無段変速機の総合的な評価を行うため、車両に搭載し、走行試験を行う予定である。
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