研究概要 |
電気自動車は排気ガスを出さないという点で一大特徴があるものの航続距離を長くとることが困難であるため、その実用性は小形車両を中心に交通の混雑する都市内の物流に用いられることにあると考える。このような場合においてもその技術課題として、バッテリの消費を節約しながら通常の交通の流れに乗れる加速性能をいかに得るか、さらに減速時のエネルギ回生をどのように効率良く実現するかという動力変換問題がある。通常のシステムでは、インバータ制御による方法が唯一の方法となっているが、部分負荷における電気モータの性能は高くなく、高い変換効率をえるには特定の動作点における作動が必要になる。本研究は、この目的を達成するため機械式の無段変速機を開発し、これを車両に搭載しその効果を実車試験により評価したものである。 (1)平成5年度(初年度)に、自重250Kg(バッテリ60kg込み)の小形車両に、36V-80A定格の2.2kWの直巻電動機を駆動源とする小形のトラクションドライブ式無段変速機(CVT;変速範囲0.4〜2.5、主要キャビティ半径22mm、ドライ質量25kg)を設計製作した。 (2)平成6年2月10日試作完了。設計通りに製作されていることを確認。 (3)トラクションドライブ装置の軽量化を図るため変速サーボ機構に2重反転ねじによるパワーローラを支持する方法を新たに開発し、その作動を確認。変速の応答特性は一次遅れ要素で表されその時定数は0.20秒と高いことがわかった(平成6年2月 機械学会論文集61巻 掲載)。 (4)伝達効率と伝達容量試験により、設計値である3000rpm,40N・m(変速比1:1において、最大ヘルツ圧力2.5GPa)を安定に伝えることができ、この時、伝達効率は85%がえられた。 (5)効率向上の見通し。効率の向上はロ-デイング方法の改善とオイルシール、アンギュラ玉軸受の設計変更により今後改善できる見込みである。 (6)車両への搭載試験と理論予測性能との比較。基礎実験終了後、実車に搭載し、従来車が最高速度20km/hであったものが、CVTを搭載することにより40km/hまで向上し、さらに加速性能を36%向上できた。これらは、計画の当初に理論的に予測された値とほぼ近いものであることが確認された。
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