研究概要 |
当初提案した浮子並進差動出力形と浮子回転出力検波形のうち,浮子並進形については,特性の向上・新機能の追加などの点で限界があるとの判断から,浮子回転形に重点をおくこととし,浮子回転形について実用性能としての動的応答特性の評価を進めた。具体的には,実機に搭載が可能な小形化設計による第2次試作を行うとともに,正弦波加振による動的応答評価を行うための装置を構築して,加速度に対する線形性の評価,回転数のゲイン特性に及ぼす影響の評価,温度変動の影響の評価を実施した。センサへの入力は正弦波入力によって加振されたセンサの加速度をレーザドップラ法で測定した信号として,またセンサの出力は,ホール素子出力を500倍に増幅して検波するとともに,回転磁場によるノイズ(回転数の8倍)をフィルタで除去した信号として検出して,周波数に対する応答をボード線図上で評価した。得られた結果を要約すると以下のとおりである。 (1)入力加速度レベル(0.03-0.18m/s^2)に依らずほぼ一定の感度(ホール素子出力としての感度は0.029mV/(m/s^2)が得られ,優れた線形性をもつことを確認した。 (2)周波数帯域は浮子質量と磁場浮力との共振周波数によって制限される。今回の試作センサでは許容精度を1dBとすれば0-15Hzは確保できる。 (3)共振周波数は帯域の点では,大きい方がよく感度の点では小さい方がよい。また,回転数は帯域の点では共振周波数の1/2以内で高い方がよく,xy連成を抑圧する点では低い方がよいなど実用上有用な設計指針が得られた。 (4)低温時より高温時の方が感度がわずかに低下する傾向が観測されたが,粘度変化の傾向からは予測できない現象であり,今後に検討を要する。 (5)回転によりxy連成効果が生じ,垂直方向に為の出力を発生させる原因となる。この効果を削減するためには,潤滑膜反力の発生を軽減すような設計が必要である。
|