研究概要 |
人間を相手とする輸送機器・医療機器の乗り心地・操縦性の向上のために,超低周波帯域で安定に動作する加速センサの開発を目的として,浮子並進差動出力形と浮子並進出力検波形の2種類の構成について設計検討を行うとともに,浮子回転形について2次にわたって試作を行い,直流応答試験・交流応答試験により基本性能を評価するとともに,実用設計のための指針を得た.得られた結果を要約すると以下のとおりである. 1)入力加速レベル(0.03-0.18m/S^2)に依らずほぼ一定の感度(ホール素子出力としての感度は0.029mV/(m/S^2))が得られ,優れた線形性をもつことを確認した. 2)周波数帯域は浮子質量と磁場浮力との共振周波数によって制限される.今回の試作センサでは許容精度を1dBとすれば0-15Hzは確保できる. 3)軸方向磁化比較して,径方向磁化では剛性・感度ともに増大するが,駆動用のカップリング力が弱いため高速回転には不適であること,またxy達成効果の増大により,方向検出の誤差が増大することなどの不利な点もある. 4)回転によりxy連成効果が生じ,垂直方向に偽の出力を発生させる原因となる.この効果を削減するためには,潤滑膜反力の発生を軽減すような設計が必要である. 5)クリアランスを小さくすると共振周波数が高くなり,使用可能周波数帯域が拡大するとともに,x方向とy方向の連成効果が小さくなり,方向に関する精度が向上する.また感度低下をリカバーすることができる.したがって,クリアランスは小さい方が望ましい.ただし消費電力・発熱の増大によって制限される. 6)低温時には感度が増大する傾向がある.温度低下に伴う流体粘度の増大により,感度の減小が予想されるが,この効果は共振周波数近傍に限定され,共振周波数以下の実用帯域では温度低下に伴う磁性体の透磁率の増大によって感度は増大する.
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