研究概要 |
高精度の恒温装置を開発するための基礎研究として,本年度は(1)シミュレーション実験による制御方式の検討,(2)実験装置の特性改善,に重点をおき次のような研究成果を得た. (1)シミュレーション実験による制御方式の検討 (a)恒温槽に対するセルフチューニングコントロールを実施するためのシステム同定を行い,数学モデルに基ずき動特性解析を行った.その結果,高精度の恒温特性を実現するために特に外気温の変動が重要であり,このための制御方式に改善を加えることが必要であることを明らかにした. (b)このためプロセス制御に広く用いられているPID制御をセルフチューニング制御に付加し(ST-PID制御という)検討を行った.恒温槽の定常特性として,内槽においては0.003℃以内の制御精度を実現することができた.また過渡特性としては従来のSTC制御に比較しオーバーシュートを抑えることができた. (c)シミュレーション実験により以上のことを確かめ,外気温が変動しても十分な精度を維持する試作装置の設計条件を明らかにした. (2)実験装置の特性改善について 発泡スチロール製外容器の内部に特殊なガラス容器を発泡スチロールで覆った内容器からなる二重壁恒温槽を試作し,実験的検討を行った.この装置の特性はシミュレーション実験の結果と必ずしも良い一致を見なかったが,セルフチューニングコントロールを行うための有用な基礎データを得た.特に今後の課題としては環境温度の変化に対する影響を調べ,良好な恒温特性をもつ装置を実現するためさらに実験的研究を進める予定である.
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