研究概要 |
本年度はびびり振動の検知システムの設計と構築をし,スペクトル解析のみ,およびスペクトル解析とニューラルネットワークの併用によるびびり振動の検知をオフラインで行った。 実験では,激しいびびり振動が発生する切削条件からまったく発生しない条件まで段階的に変化させて二次元切削を行い、被削材の振動変位,動的背分力,および工具の振動加速度を同時に計測した。実験で得られた被削材の振動変位のデータを従来の研究で提案された検知の方法で判定したところ,びびり振動が発生していないにも関わらず,発生したと判定してしまう誤判定が多発した。本研究では現場で行われる切削作業を想定し,被削材に外部から衝撃力を加えないで実験したため,衝撃力を加えることを前提とした従来の判定方法は適当でなく,このような誤判定を生じた。そこで,振動スペクトルのピーク値だけでなく,ピークになる振動数にも着目した検知方法を提案し,実験を行った範囲で,目視による判定結果と98%一致するアルゴリズムを得た。しかし,この方法でも動的背分力での成功率は72%,工具の振動加速度では81%であった。 スペクトル解析とニューラルネットを併用する検知では,切削速度40m/minでのびびり振動が発生していない場合と発生している場合について,それぞれ連続した6回転分を一組とするスペクトルを教師信号として学習させ,他の切削速度でのびびり振動の発生を判定した。その結果,被削材の振動変位での成功率は93%,動的背分力では78%,工具の振動加速度では78%であった。成功率は予想よりも低かったが,本研究で提案した方法により,基本的にはびびり振動の検知が可能なことが確認できた。また,検知に失敗したスペクトルは,教師信号として用いたスペクトルに比べ,スペクトルの全体的なレベル,あるいはスペクトルがピークになる振動数が異なっており,スペクトルを正規化することにより,より正確な検知が可能になると期待される。
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