研究概要 |
本年度はスペクトル解析とニューラルネットワークの併用により,びびり振動の検知と工具の逃げ面の摩耗幅の同定を同時に行うニューラルネットワークを構築し,その有効性を実験により検証した. 認知を行うニューラルネットワークには,びびり振動のみを検知する場合と同じ3層の階層型を用い,学習はバックプロパゲーションで行った.ただし出力層のユニットの数は2つとし,びびり振動と工具の逃げ面の摩耗幅にそれぞれ対応させた. 実験には旋盤を用い,黄銅製の円盤の外周を突切りバイトで二次元切削した.切削速度は100m/minで一定とし,検知には切削工具の振動加速度を用いた.また,切削工具には人工的に工具の逃げ面を削り,異なる摩耗幅を付けた4つの突切りバイトを用いた.ニューラルネットワークの学習には,この内の3つの工具を使い,激しいびびり振動が発生する切削条件から,まったく発生しない条件まで切削幅を段階的に変化させて得られた振動スペクトルを用いた.ニューラルネットワークによる認知は,4つの工具による切削実験で得られた工具の振動データについて行った.その結果,学習を行った工具と切削条件では,びびり振動の検知と工具の摩耗幅の同定の成功率はそれぞれ80〜90%で,振動スペクトルをパターンとしてニューラルネットワークに学習させることにより,工具の摩耗幅の同定は可能なことが確認できた.しかし,学習を行っていない切削条件と工具では成功率は半分以下になり,ニューラルネットワークによる振動スペクトルのパターンの汎化能力は,当初の期待ほどにはないことがわかった.
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