研究概要 |
本研究の目的は,超LSIの修理,マイクロマシンの組立,細胞や遺伝子操作などのために,電子顕微鏡からの視覚情報に基づいてナノメートルオーダの精度で微小な対象物に対して作業を実施する「ナノビジュアルサーボイングマニピュレーションシステム」を構築し,その有効性を実証することにあった. 本研究の成果は,電子顕微鏡,その試料室に内蔵されたナノマニピュレータ,実時間画像処理装置,それらを統合制御するワークステーションから構成される超微細作業のためのナノビジュアルサーボイングシステムを構築したこと,視覚情報に基づいてロボットに頑健に作業を行なわせるために作動譜というロボットの作業行動を表現する手法を確立したことにある.最後に,視覚とマニピュレータを統合制御することにより,幅1〜3μmの細線をナノメートルオーダの精度で引っかくというLSIマスクの補修を模した作業に成功し,電子顕微鏡からの視覚情報に基づいてナノマニピュレーションを行なうシステムの有効性を証明することができた. 本研究を進めるにつれて,様々な微細作業を自律的に行なおうとすると,位置情報だけを視覚的に検出する単純な位置サーボ制御だけでは不十分で,視覚情報からロボット自信が実行している行動や起こっている事象など,より抽象度の高い情報をとらえることのできる行動検出機能に基づいた行動サーボ制御が本質的に不可欠であることが明らかになった.行動譜に基づいた作業の機能をより充実させ,構造物の組立などのより高度な作業を実施することが,今後の大きな課題である.
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