研究概要 |
前方の障害物までの複数の距離と方向を同時にヘッドホンを通してステレオ音響として認識させることが可能な視覚障害者のための視覚代替器を開発し,実用化試験を行った。この装置で簡単な形状の認識や,また障害物を避けて歩くことが可能となった。 この装置の開発と実用試験から得られた結論を要約すると以下のようにまとめられる。 1.8chのステレオ音響発生回路を使用するとき,距離信号のミキシング効果に基づいて,同時に任意の8方向の距離を知ることが可能である。1chだけのものよりも障害物の方向の認識が速くできること,相対的な距離感がつかめることがこの装置の特徴である。 2.距離を周波数の変化として伝え,かつ方向をステレオ音響により認識させる本法は視覚補助にきわめて有効であり,目視による距離感以上の感覚を使用者に伝えることが可能である。また,本法は対象物が比較的簡単な形状であれば形状認識にも有効である。 3.前方の情景を左側から右側に時分割して耳に伝える方法も試みたが,時分割回路の使用は形状認識率の向上に必ずしも有効ではなく,その利点は視覚装置を大きく振る必要がない点にある。 4.レーザとCCDカメラを利用した方法ではフィルターを使っても明るい場所での使用は困難である結果が得られた。この限界と強いレーザ光における安全性の問題を乗り越えるため,同期駆動された2台の小形テレビカメラの映像信号の入手と同時に映像中の特徴点と視差(距離の逆数)を検出する装置と装置の小型化のための新たなゲートアレーICの開発を進めている。
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