本研究は、筆者の着想による直交磁心型DC-AC変換器を用いた連系方式の太陽光発電システムの実用化を目的とし、家庭用規模の変換器の製作と太陽電池模擬電源による検証を行うとともに、太陽電池による不規則な発生電力を有効に利用するための最適制御方式の確立を図るものである。以下、本研究の成果を記述する。 1.太陽電池模電源の製作:プログラマブル直流電源とマイクロコンピュータにより、3kw程度の太陽電池アレイの出力特性を極めて良好に再現する模擬電源を構築した。 2.検証用小型器の製作:実器の製作に先立ち、400W程度の小型の直交磁心を用いて単相用DC-AC変換器の製作を行い、最適励磁回路方式ならびに制御方式について、シミュレーション並びに実験により検討を行った。これにより、実規模装置の開発に必要な事項が明らかになった。 3.上記と平行して、装置の最適設計についても検討した。非線形な電気機器である直交磁心の解析・設計手法として、3次元的な非線形磁気回路モデルを提案し、"Reluctance Network Analysis"を適用して直交磁心の磁化特性の算定を行い、良好な成果を得た。これは新しい知見である。 4.実規模装置の製作:上記の成果に基づき、3kW程度の直交磁心形DC-AC変換器の製作を行った。試作器の効率、力率はともに90%以上であり、実用に供し得る特性が得られている。 5.応用分野の開拓:本研究では、直交磁心の新しい応用についても検討を行い、低歪みで高速応答の可能な無効電力補償装置への適用の可能性を明らかにした。 以上、本研究の結果、直交磁心型DC-AC変換器を用いた太陽光発電システムの実用化の見通しが得られるとともに、直交磁心の新しい応用分野の開拓もなされ、所期の目的はある程度達成されたものと考えられる。これらの成果は電気学会、電子情報通信学会、日本応用磁気学会の研究会及び学術講演会等で発表を行った。
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