研究概要 |
世界最大級のGTOサイリスタ(6kV6kA)の開発・実用化に伴ない,100MVA級の自励インバータを使用した静止形無効電力補償装置が注目されている.しかし,他励サイリスタを使用した従来の方式に比べて自励インバータの損失が大きく,大容量無効電力補償装置の実用化に当たっては損失の低減が重要な検討課題である.一方,1987年に東京大停電が発生して以来,20ms-30msの応答速度を有する100MVA級の無効電力補償装置を電力系統に多数台設置し,送電容量の増大と共に大停電を未然に防ぐ必要性が各方面から指摘されてきた. 本研究は,こうした社会的背景のもとに,高効率かつ無効電力の高速応答を可能にした大容量の無効電力補償装置を開発しようとするものである.本研究では,1)自励インバータの損失低減法,2)無効電力の高速制御法を確立し,自励インバータを使用した大容量無効電力補償装置の本格的な実用化を目的とし,以下の点を明らかにした. 1.平成5年度では,4台の三相電圧形PAMインバータとΔ-Δ結線,Δ-Y結線の三相変圧器4台を用い,一次側を直列に接続した無効電力補償装置(10kVA)を設計・製作した. 2.平成5年度に試作した無効電力補償装置を使用して詳細な実験を行った.その結果,瞬時無効電力のフィードバック制御を付加することによって従来は不可能と考えられていた応答時定数5msを達成した.これらの理論解析と実験結果をまとめた論文は,平成7年5月に電気学会論文誌に掲載されることが決定した. 3.研究代表者らが開発したロスレススナバ回路は,安定に動作することを実験により確認し,スイッチング損失の低減と電磁ノイズの抑制に有効であることを明らかにした. 4.系統インダクタンスと直流コンデンサとの間の高調波共振の可能性を指摘し,その解析の妥当性を実験により確認した.
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